『ディクテーションって時間がかかるから、 シャドーイングで十分 』という意見がありますが、私個人としてはディクテーションってかなり意味のある学習方法だと思っています
特に英語初級者や中級者の人にとって効果の高いトレーニングだと思います
そもそも、ディクテーションとシャドーイングに求める効果といいますか、トレーニングの目的は違うものだと私は認識しています
ディクテーションにはディクテーションをする目的があり
シャドーイングにはシャドーイングをする目的があります
今回の記事では、それぞれの目的を説明した上で、なぜ私が非効率と言われやすいディクテーションをおすすめするのか紹介したいと思います
学習法でどちらを取り入れるか悩んでいる方はぜひ参考にしてみてください
シャドーイングで十分 ?
シャドーイングの効果の記事でも説明したのですが、シャドーイングは確かにリスニング学習に置ける『精聴』の要素を含んでいるので聞き取りのスキルアップに役立ちます
聞き取れなかった音は、自分でも口に出すことができない
シャドーイングをすると、このポイントは必ず実感します
だから、『聞き取れなかった部分を明確にするだけならシャドーイングで十分 、わざわざ書き出すディクテーションは非効率』という意見があるのも頷けます
聞き取れない部分を知るのに、書き出すことは必ずしも必要ではないですからね
何回か聞いて、言えなかった部分のスクリプトを見れば良いです
しかし、私個人の意見として、ディクテーションの効果は『自分の聞き取れない音を明確にする』以外にもあると思っています
その効果の説明の前に、シャドーイングとディクテーションの目的の違いを説明したいと思います
学習の目的
学習法(トレーニング)の効果と目的を認識しておくことはとても大切です
例えば、『英語のスピーキング力を伸ばしたい』と思った時に
- シャドーイングをする
- 英会話教室に通う
- 瞬間英作文をする
- フレーズ本を買う
などなど、いろんな選択肢があると思いますが、あなたならどれを選びますか?
これに答えるためには、『スピーキング力を構成する要素』を理解している必要があります
スピーキング力を構成する要素は
- 文法
- 語彙力・単語力
- 発音
- イントネーション
- リズム
- 思ったことを瞬時に口に出せる能力
などなど、複雑に絡み合っています
なので、会話フレーズ本を買ったとしても、『語彙力・単語力』は上がりますが、肝心な『文法』の知識がなければ、自分で組み立てることができないので、応用ができません。
フレーズの丸暗記以外で使い道がなくなってしまします
とは言え、『文法』と『語彙力』があっても、『思ったことを瞬時に口に出せる能力』がなければ、スムーズな会話ができません
このように一口にスピーキング力と言っても、それを構成する要素を紐解いて、それぞれに効果のあるトレーニングをする必要があります
ということで、まずはシャドーイングの効果とディクテーションの効果を比べてみたいと思います
シャドーイングの効果
シャドーイングの効果の詳細は、上に紹介した記事でお伝えしていますので、ここでは簡潔に紹介したいと思います
シャドーイングの目的は主に次の3つです
- リスニング力
- 発音・イントネーション
- 表現力
リスニング力がつく理由は、上に説明した通り『聞き取れない音は真似できない』為、スクリプトを見てセリフを確認する必要があります
セリフ(英文)と音声を照らし合わせることで、英語の音が認識できるようになる訓練になります
聞こえてきた音をそのまま真似するので、わざわざ自分のカタカナの音に直す方が手間です
そっくり真似しようとすることで、英語独特のリズムや抑揚を学ぶことができます
また、スラッと口から出てくる英語表現は、頭に入っている英語表現のごく一部です
これはアウトプットとインプットの関係でも説明しましたが、英単語を覚える際には7つの習得度を意識する必要があります
- 見たら文脈からなんとなくわかる
- 見た瞬間にパッとわかる
- 見た瞬間にパッとわかる・聞いた瞬間に文脈からわかる
- 見た瞬間・聞いた瞬間にパッとわかる
- 見た瞬間・聞いた瞬間にパッとわかる+書ける
- 見た瞬間・聞いた瞬間にパッとわかる+正しい文脈の中で書ける
- 見た瞬間・聞いた瞬間にパッとわかる+正しい文脈の中で書ける+発音できる
シャドーイングは、この習得度を7まで上げてくれるトレーニング方法です
具体的な例は、上に紹介した記事で解説しています
また、シャドーイングをすることでリーディングが早くできるようにもなります
この関係についてはまた別記事で紹介したいと思います
ディクテーションの効果
シャドーイングがどちらかといえば『アウトプット』の方に効果の重点があるのに対し、ディクテーションは『インプット』の方に効果が高いと私は捉えています
『インプット』と『アウトプット』の関係はこちらの記事で確認できます
→【なぜできない?】英語が書けて話せるようになる には必須の学習法
ディクテーションで得られるメリットは
- 『読める』と『聞ける』の差がわかる
- 文法の習得度をあげることができる
『読める』と『聞ける』の差
ディクテーションやシャドーイングをやると自分の苦手な部分が浮き彫りになります
わからない部分のセリフを確認してみると、『なんだ!そんなこと言ってたんだ』って思う時が出てきます
そして、セリフの部分を確認することで、聞き取れなかった理由がわかります
- 単語自体を知らなかった
- 音の繋がり『リンキング』に慣れていない
- 発音を間違えて覚えている
などなど、聞き取れなかった理由が分かるので、対策を立てることができます
(この辺はディクテーションのやり方の記事で紹介します)
と、ここまでなら、別にわざわざノートに書きださなくてもセリフ見れば同じですよね?
じゃぁなんであえてディクテーションをするのかというと、理由の1つに人間の心理の問題かなーと思います
わざわざ書き出すのって面倒ですよね
聞いてて『まぁ、全文はわからないけど、意味はほぼ分かるからいいや』って思ったりします
で、わからなかった部分はセリフみて『あっ!そう言ってたのね』で終わった場合と、『う〜ん、なんで聞き取れないんだろう』と頭を捻らせるのにある程度時間を費やしたあとで『そう言ってたのか〜』では、後者の方が後々になって記憶に残って定着していると思いませんか?
人によっては、それで記憶に残る人もいるのかもしれませんが、私の場合は忘れちゃいます。。
この『まぁいいや』って感情は結構厄介で、シャドーイングやリスニングの時にみたいに目の前に書き出せる環境がない状態だと結局その部分はおざなりなった状態のままになります
でも、ここがあなたの伸び代の部分だと思うんです
せっかくの伸び代を放置するは勿体無いなぁと思うのです
と、これが多少手間がかかってもディクテーションをやった方がいいと思う理由の1つです
文法の習得度をあげる
で、もう1つの理由がこちら
なぜディクテーションが文法と関わりがあるのかというと
聞こえた音だけでは文を完成させることができない英文もあるから
です
ちょっと、ここで試しに次の音声2つを聞いて見てください
どうでしょう?
多分赤字の部分の音は省略されているように聞こえると思うんです
- I’m at band classes on Saturday
- Put that hat in the bag
これは、リンキングやアクセントの強弱によって省略される音がある為です
でも、文法の知識があれば、赤字の部分が何を言っているのか推測して補うことができます
そして、『何を言っているか分かる』ということは、自分が話す時、つまり『アウトプット』の段階で非常に重要です
他にも同音異義語もあるので文法知識を使ってその穴を補う必要もあります
- The man was caught red-handed and is due to face court
下線部の単語は2つとも同じ発音(kˈɔːt)です
これらのポイントをまとめると、リスニングは推測できる力も重要なんです
推測できる力は、文法を学んだり、会話パターンに多く触れる必要があります
リスニングをすることで文法の復習、さらに確固たるものに習得度をあげることができるのです
このへんの詳細はこちらの記事で紹介しています
目指す英語レベル
結構大切な質問をします
本当に大切なのでよく考えてみてください
あなたが目指している英語レベルはどれくらいですか?
資格の点数や級を抜きにして、英語を使って『具体的にどんなことができるようになりたいか』?を考えてみませんか。
- 海外旅行を全部自分で手配したい
- 訪日外国人のガイドがしたい
- 仕事で使えるようになりたい
- 英語でいろんな情報を得たい
- 英語を教えられるようになたい
こう言った目標をまずは立てることで、そこに到達するまでのステップが逆算しやすくなりますし、学習法の取捨選択も行いやすくなります
極端な例かもしれませんが、『英語でいろんな情報得たい』であれば、ライティングやスピーキング、発音練習は不要になります
それならシャドーイングよりも、ディクテーションの方が目標達成のために効率が良いです
自分が音を出す行為に集中する意識を全て、耳に捧げてトレーニングすることができます
本当に極端な例を出しましたが、目指す英語レベルの設定の大切さはイメージできるかと思います
なので今一度、自分が『英語を使ってどんなことがしたいのか』を考えてみてください
次のページでは、ディクテーションの具体的なやり方とおすすめの教材の選び方を紹介します